炭坑の子供たち(1)
まともな野球道具なんて、あろう筈もなく

バットは、おやじが、坑木を削ってこしらえてくれた丸太ん棒であった。

グローブなんてもっての他で

ほとんどの子が、素手でボールをキャッチしていた。

ちょっと気のきいた子は

ばあさんが、石炭拾いに使って、真っ黒になった軍手を

こっそりと家から持ち出して、それをグローブの代わりにしていた。

時たま、町の方の子が、ピカピカのグローブを持って来て、仲間に加わるが

いい道具を持った奴に、上手な者はおらず

一応仲間には入れてやるが、大抵、滅多に打球の飛んで来ないライト、別名ひらいたんを守らされ

あんまり退屈すぎて、しまいには、折角のグローブを

帽子代わりにして、頭にかぶっていた。
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