炭坑の子供たち(1)
 子供達は、四軒社宅の自分の家に逃げ込んで

窓から、通りを見ていると

けたたましい女性の悲鳴が上がり

家の前を、牛が猛スピードで走り抜けて行き

又、女性の悲鳴が聞こえる。

夕暮れ前の、炭住街は大混乱である。

少し静かになったので、恐る恐る通りに出てみると

少し向こうの社宅の前に、10程の人だかりが出来、みんなが中を覗いていた。

もしや誰かが、猛牛の角に刺されたのでは

と、心配して行ってみると

中では、その家のおっさんが、両手で正面から牛の角を持って

大声を張り上げていた。

「おおいっ、早くカマのおやじを呼んで来てくれえっ」

どうやら牛は、表の戸が開いていたその家に飛び込み

たまたま居合わせたおっさんが、とっさに両手で、角をつかんだのであろう。
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