炭坑の子供たち(1)
 何人もの中学生が、板壁のふし穴から、女風呂を覗いているが

湯気でぼんやりとしか見えなくとも

生唾を飲み込み、下半身にはテントが張っている。

すると、近くに住むあんちゃんが、近付いて来て、押し殺した声で

「こら、きさんらちゃあらんぞ(つまらんぞ)、帰れ、帰れ」

と、中学生達を追い払い

風呂場の治安を守る、正義の味方と思いきや

今度は、自分で覗き始めていた。

追い払われた中学生達は、面白くないので

腹いせに、駐在所のキンゴローにチクリに行く。

この駐在、顔が柳家金語楼にそっくりで

自転車に乗って、炭住街を巡回している時に

よく物陰に隠れた子供達から

「キンゴロー」「はげ茶瓶」

と、からかわれていた警察官である。

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