【更新停止中】家政夫くんの攻略法
「はいはい。わかりましたよー」
諦めたのか、牧村は他の班へと移った。
ほんの少しだけ、心の奥がチクリと痛む。
かなしくなるのはなんでだろう。
つい強気な態度をとってしまうあたしは、小春と違って可愛げがない。
かたり、とお皿を机に置く。
「なあ。見てて」
不意に声をかけられ、落としていた目線を上げる。
すると牧村はどこからか仕入れたかまぼこを、薄い約2ミリ程度に切った。
その一つに縦、横に細く切れ目をいれる。
ひとつひとつ、丁寧にそして素早く織り込む。
「はい。かまぼこの飾り切りのかんせーい」
緩く答える彼の手元には、複雑な模様の円いかまぼこ。
「これ、松っていう切り方」
「手先、器用ね...」
その後もうさぎ、ちょうちょ、結びかまぼこなど様々な作品を作ってくれた。
きれい。
「お。やっと笑ってくれた」
意地悪に笑うその顔。
「笑うとかわいいよ」
たったそれだけなのに、胸がきゅっと苦しくなる。
かまぼこはその後美味しくいただきました。
「こらー! 余りのかまぼこ盗ったの誰?!」
家庭科の先生の声が響いた。