放課後は、秘密の時間…
それに気がついたのか、市川君はもう一度、あたしの目の前に携帯電話を突きつけた。


「先生は断れない。俺がこの写メを持ってる限り」

「市川君……」

「そうだろ?」


彼の言葉を否定できない。

あんな写真、誰にも見せられないよ……


――絶対、誰にも。


追い詰められたあたしとは反対に、市川君は楽しそうに目を細めた。

まるで言い聞かせるような、ゆっくりとした口調で、


「これは、俺達二人の秘密」

「……ひみつって……」

「先生も写メ回されたくなかったら、俺の言うことちゃんと聞いて?」

「そんなっ……」

「じゃあね、センセ。また明日」


手の平をひらひらと振りながら、市川君はドアの向こうに消えていった。

残されたあたしは、ただ呆然と、その姿を見送ることしかできない。


しばらくして、黒い学生服が完全に見えなくなったと同時に膝が砕けて、あたしはその場にへなへなと崩れ落ちた。


これって、現実よね……?


つねってみると、確かに右頬が痛い。


夢じゃ……ない。

夢なんかじゃない。


全部、あたし自身に起こってる出来事なんだ。

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