放課後は、秘密の時間…
「わかりました。それじゃこのまま描いてみます」


鉛筆を握って、画用紙と向き合った市川君の横顔は、やっぱりどこか強張ってる。


――って、何であたしがビクビクしてんの?

べつにムッとしようが何しようが、市川君のことなんてあたしには関係ないんだから。


気を取り直して、あたしが他の生徒の絵を見に行こうとしたとき、


「二宮先生」


振り向くと、指導教官の谷村先生があたしを手招きしていた。


「すみませんが、準備室にある絵の具を持ってきてもらえませんか?このままだと、足りないと思うので」

「はい、わかりました」

「ですが、先生一人だと大変なんで。美術係、ちょっと来てー」


美術係って、確か……

嫌な予感って、どうして的中するものなんだろう?


谷村先生に呼ばれてやってきたのは、


「ああ、市川か。悪いんだけど、二宮先生と準備室に行って、絵の具持ってきてくれるか?入って右の棚の二段目にあるから」

「いいですよ」


よくない。

全然よくないっ!


「だ、大丈夫です!私一人で大丈夫ですから!市川君は絵の続き、描いてて、」

「先生、そんなに気を遣わなくてもいいんですよ。それじゃ、市川、頼んだな」

「はい。じゃ、行きましょ、二宮先生」


何でこんなことになっちゃうの……?

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