雪花狂乱〜不良少女は秘密をもつ〜
仮にもあたしは“彼女”なんだから。
でも彼が選んだのは妹で、あたしではなかった。
わかっていたことなのに。
わかっていたことなのに、つらい。
「幸子、手当するよ」
「センパイ…」
「言い訳とか後で聞く。あんた女の顔に傷つけてんじゃないよ」
「……はい、」
「あとはどこも怪我してない?」
「…してません」
本当はお腹とか何発も殴られてるから、痛いっちゃ痛いけど、殴られたなんて言えないし。
まあ、痣にはなるだろうけど、今すぐ手当しなくても大丈夫だろうし。
センパイに頬の手当をされながら、でも目線は凪さんを追う。
今日もカッコいいなあ、なんて今の状況では誰も思わないことを思う。