ー紫神(シガミ)ー

 何が悲しいのかわからないまま、少女は無表情を作る。悲しくても涙は出なかった。涙はもう枯れてしまったのだろう。

 こんなに苦しいのだから、少女がこの世を飛ぶのは簡単だった。

 方法もあった。

 だが少女がそれをしないのは、少女の中に楽しかった日々の思い出があるからだ。

 だが、もうそれもない。

 知っていてもまだ、少女は踏み出せなかった。

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