思い出はあなたの中に
「藤沢くん。今日は来てくれてありがとね」

言い忘れたが俺の名前は藤沢信治だ。

急にヒトミはオレに告げた。

久々に聞いたその声は、鈴がなるように軽やかで、オレの鼓動を速くした。

「私もう一回藤沢くんに会いたかったの。」

「へーどうして?」

内心とは裏腹にオレは平静を装った。

「はっきりと理由を言わなきゃダメ?」

かわいい顔でいたずらっ子のようにヒトミは微笑んだ。

「えっ…いや…」

せっかくクールを気取ったのに、その顔を見た瞬間いとも簡単に崩れてしまった。

くすくすとヒトミは笑った。

「藤沢くん、顔真っ赤だよ?」

ヒトミが笑った。

ただそれだけでオレは満たされた。
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