たった一人の親友へ〜another story〜
傷口
“隆也と別れちゃった”


そんなさなからの知らせを受けたのは、あれから数日たったある日だった


言えなかった


あんなに寂しそうに泣くさなの姿を見てしまったから


俺はまた残酷な嘘を彼女に突きつけたんだ




「そっかー。二人して傷心だなぁ(笑)」




“ゆいとやり直すんだ”なんて



怖くて言えなかった


後でどれだけさなが傷つくか


一人で涙を流すか


そんなこと俺が一番分かってたのに


俺はその場しのぎで


ずるい方法を選んだ


この期に及んで、さなを失いたくないなんて思ってる俺は


ずるくて汚い


最低なやつなのかな




< 127 / 220 >

この作品をシェア

pagetop