たった一人の親友へ〜another story〜
さなの小さな手をひいて、家の前に停めてあるバイクを見せると


少し驚いた顔の後に


案の定いつもの笑顔を見せてくれて



安心した


君の笑顔を見ると安心するんだ


さなのために用意したピンクのヘルメットを渡す


ヘルメットの褐色のいいピンクは


さなにぴったりで



「それ、さなの専用だから!
ちなみに俺の後ろに乗るのお前が初めて」




ちょっと調子に乗った俺に


君は気づいてたかな




俺の腰に回るさなの腕


必死にしがみついてる姿に


自然と笑みがこぼれた




向かった先はあの海


俺達の始まりと


終わりの場所




どうしてだろう


この場所に来ると


“命”を感じる


生きてるんだって思える




いつか何十年か後にまた二人で来たい


その時突然漠然と思った







今思えば


きっとこの海は知ってたんだ


俺の命の灯を


限りのある時間を


俺の


最期の


トキを
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