たった一人の親友へ〜another story〜
夏休みに入る数週間前


暑さに湿気が混じって


べったりと汗がTシャツにまとわりつく


そんな気持ちの悪い日




朝からけたたましいくらいの着信音が鳴った


無視しようにもずっと鳴り続ける携帯を


無理やり起こした身体でとる





「もしもし?」


「もしもし?翔さんですか?

こちら〇〇病院の田中といいます」


あまりに相手が早口でまくしたてるから


こっちも慌てて返事を返す


「はぁ。そうですが」


「お母様が重体で病院に搬送されました。
詳しいことは病院の方で。
すぐ来れますか?」




え?


重体?


誰が?



全く状況が読めない


「翔さん?
翔さん!?」


頭の奥の方で声が聞こえる


「あぁ。はい」


「それではお待ちしております」


事務的な声で電話を切る医師





全身が震えていた


汗がどっとでる


母さんが?


何で?

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