たった一人の親友へ〜another story〜
卒業式には


母親と義父が揃って参列してくれて


母親に限っては号泣しながら俺に抱きついてきたりなんかして


本当いい迷惑、なんて思いながら


実は嬉しかったんだ


こんな日が来るなんて信じられなかったけど


それが現実になったんだから


ようやく家族が俺にもできたんだ


そう思うと涙が出そうになって


必死に止めようと思いながらも


少し涙ぐんでしまった


そんな俺を見て母は


“ありがとう”と俺に告げた


いつもの


“ごめんね”じゃなくて


“ありがとう”





母さん


その言葉だけでどれだけ俺の力になるか


俺だって十分感謝してるよ
















なぁ母さん


今度は俺が謝る方だね


この日が最後になるなんて


この時が最後になるなんて


俺たちには知るすべもなかった


もし分かっていたら


母さんに


照れくさくて言えなかった


“ありがとう”の一言でも






伝えたかったな



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