ガラスのタンポポ#虹
走る車の外には、色とりどりのクリスマスイルミネーション。


都内の赤と緑の装飾を存分に楽しんでから、高速に乗った。


久しぶりの遠出、それだけで奏来ははしゃぐ。


軽井沢の雪景色を見たら、どんな顔を見せるだろう。


想像するだけでオレは満たされた気持ちだった。


淋しい枯れ木が増えてくると、土を覆う雪もちらほら。


快晴の青い空に見えてくる南アルプスの白とのコントラスト。


雄大な自然と白樺湖。


奏来はしょっちゅう車窓からデジカメをかまえて外の景色を撮ったり、運転するオレをカメラにおさめたりと、ちっとも大人しく座っていない。


こんなに賑やかな奏来はいつぶりだろう。


声を失い兄貴の所へ行ってから、こんな表情は見た事がなかったけれど。


兄貴の前で。


笑う事はあったのだろうか。


オレが目にしていたのは、いつだって、出ない声を堪えた奏来ばっかりだったような気がするよ。


嬉しい、楽しいと少しでも感じれば、それを罪のように感じ封じてしまう。


そんな奏来ばっかりだったような気がする。


オレに感情を見せる奏来。


たまらなく愛しいよ。


もう強がる事も、堪える事もしなくていい、オレと奏来。


春までの期間限定だから貴重なんじゃない。


いつだって奏来はオレの特別だよ。
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