ガラスのタンポポ#虹
奏来は声を失った。


その悲劇がオレ達を襲ったのは、昨年、秋。


オトばあの介護に追われ、風邪から肺炎をこじらせて亡くなったオトばあの葬式からすぐに、奏来の喉頭ガンが発覚した。


弁当と言っても小さなおにぎりすら食えなくなっていた奏来の病状に、オレは気づいてやれなかった。


気づいたのは、兄貴だった。


医者の宣告したその病名を信じられず、何件も病院をはしごしたらしいが、その悪夢のような病の名は変わる事はなく、奏来は喉頭の全摘手術、放射線治療を行った。
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