ガラスのタンポポ#虹
何故、オレは気づいてやれなかったのだろう、と。


奏来と、奏来の声を失ったオレは後悔ばかりで、泣きながら奏来の書いた手紙とガラスのタンポポを握り締めるだけの日々。


どんなに悔やんでも、どんなに泣いても、こんなオレだから奏来を包み込む事のできなかった目の前の現実に、歯をくいしばって受け入れるしかなかった。


奏来は兄貴を選んだ。


オレに最後の言葉を残して。


“翔ちゃん、ありがとう。大好きです”


今でもオレのケータイに残っている奏来の声。


オレは。


今でも消せずにいる。


奏来の声、奏来の涙、奏来の唇。


なぁ、奏来。


オレは今でも奏来が好きだよ。


もう振り向かないでと綴られた言葉。


約束してと書かれた文字は、もうオレの涙で滲んでしまい、便せんの上でも、心の中でもぼやけてしまい、もう消えてしまったよ。


だから、どうしたってこの気持ちを封じる事ができないんだ。


約束守れなくてゴメンな。


オレは奏来が。


奏来が好き、だよ。
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