悲しき 極道

イジメ

ワシのアダナは、
『馬』
やった。


足が早かったからやない。


当時、プロレスが流行ってた。

プロレスごっこの時、
ワシが
上田馬之助役やったんがキッカケや…

…やるんやなかった…



普段のアダナは馬やけど、
ある一部のヤツが
『ゲンバク』
と、名付けよった。


そぉ、
火傷の跡があるからや…


今で言うイジメやな。


…ゲンバク…

簡単な言葉やけど、
意味は重たい。


その呼び名が、
イヤでイヤでしゃーなかった…



 ワシが産まれて1年半の頃―

ワシは近所の
シンちゃんと二階で遊んでた。

スーパーマンの様に、
バスタオルを首に巻いて
階段の上を通りかかった時、
シンちゃんがタオルを踏みよった。


走ってたさかい、
頭はそのままで
足だけ前に進んでコケて、
階段を転げ落ちた。


運悪く、階段の下には
ストーブがあったんや。

その上には、
ピーピーなるヤカンが
ピーピー言うてたらしぃわ。


丁度その時、
オヤジとオカンは、
下の部屋でケンカ中…

ヤカンのお湯を、
頭から浴びたさかい、
大火傷で死にかけてたらしぃ。




…こんなイキサツで、
火傷の跡がある。


ワシは死にたくてしゃーなかった。

人は言葉で殺せるな…



ワシはイジメがイヤで、
自分の指をナイフで切ったった。


学園には、病院がない。
ヒドいのは、外の病院に行く。


ワシはそれを狙って、
脱走しょーと思ってた…


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