エデン
振りしきる雨は容赦なくおれを濡らす。
どれだけ歩いたのだろう。
気がつくとおれは大きな屋敷の前に立ち止まっていた。
こんな家に生まれたら、何も苦労せずに生きてけるんだろうな‥‥。
屋敷の前に一台の大きな車が止まった。
おれはその車を横目で追う。
運転席から中年の男が出てきて、後部座席のドアを開けた。
出て来たのは煌びやかな小太りのおばさん。
あーゆうのを貴婦人てゆうのかな?
おれの視線は、おばさんではなくおばさんが肩から提げてるショルダーバックへと移った。
‥‥金、入ってるかな?
多分、この時のおれは何も考えてなかったんだと思う。
だっておばさんの周りには、何人もガードマンがいるんだ。
おれはそこまで馬鹿じゃない。
けれど、気がついたら走っていた────‥‥
────ヒカル、おれはお前の為に何が出来る?