エデン

「お姉ちゃんまだ!?」

「ああ。今行く」

ユウキは朝から浮かれてる。

いつもはあたしよりも寝ぼ助なのに、早起きしてあたしの事まで起こしてくれた。

今日は、久しぶりに母さんに会える日なんだ。

母さんは身体が弱く、殆んどが入院生活を送っている。

あたしもユウキも学校があるから、見舞いに行けるのは週に一度。

それに先週はユウキが風邪を引いて行けなかったので会えるのは二週間振りだ。

だもんで、母親っ子のユウキは朝から落ち着きがない。

あたしは支度を終えると、ユウキの手を引いて家を出た。

「‥‥あれ」

家を出てすぐ隣の家の前に見知った顔を見つけた。

「レイナ!」

名を呼ぶと、綺麗な笑顔を向けてくれた。

「サクヤちゃん」

彼女はあたしらの従姉妹で、三年年前に嫁いで行った。

それでも月に一度は弟の住むこの家に顔を出している。

「‥‥カイ、またいないのか?」

なのに最近はすれ違っているのか、全く会えないらしい。

寂しげなレイナの笑顔を見ていると、一発や二発カイの事を殴ってやりたくなる。

「しょうがねーな、アイツは。」

レイナには言えないけどあいつがいそうな場所なんて想像がつく。

あの万年発情男が。

レイナに気づかれないよう、ため息を零した。




< 134 / 148 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop