恋歌 〜secret love〜


駅からすぐの白い建物のドアを開ける。



「おはようございます」



ここに通い始めて、もうすぐ1ヶ月……かな?



大学に慣れるために過ごした4月。


ここに……つまり、歌のレッスンに通うことを決めて動いた5月。


そして、雨にも負けずに頑張ってるのが今。



ここに通う分友達と遊べないこともあるし

1年生の初めだからって詰め込んだ講義との両立が苦しくなることもある。



でも、全部自分で決めた道だから



そのために掴んだ大学生活でもあるから……



「おはよう。今日もお疲れさま。先生はもうすぐ来ると思うから」



今は、全力で悔いが残らないようにするの――――



「わかりました。ありがとうございます」



受付のカウンターにいた女の人に軽く頭を下げて、白い廊下を進んだ。



いつも使う個室に入ってから、壁際のパイプイスに座る。



窓のない白い壁に、グレーの絨毯が広がる四角いこの部屋は、何回来ても少し窮屈な感じがした。


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