One STEP



あたしは迷った。



もちろん見たいと思う。


けどそれを見て、あたしの心が動くわけがない。



中学のとき、そうだった。


演劇をすると聞いたから見に行った。



すごい面白いと思った。


カッコいいなと思った。



けど、それをやりたいとは思わなかった。



あたしにはあんな勇気はない。


みんなに楽しんでもらうような、あんな素晴らしいことは絶対できないと、同時に思ったんだ。



「ね?」と、少し不安そうな顔をする先輩。



そんなにあたしの声がいいの?


そんなに演劇部に入ってほしいの?



そこまで思う、理由はなんで…?



断れなかった。


こんな先輩の顔を見て、断れるわけなかった。




だから返事は、



「…分かりました」



こう、言うしかなかった。



< 41 / 528 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop