One STEP

理想の彼氏




「誰と話してたの?」


ぬっとドアからひょっこり顔を出す琴子に、あたしはビックリして肩を跳ね上がらせながら、



「うお!ビックリするじゃんよ!」



一歩後ずさり言った。



どうやら琴子はあたし達が話し終わるのをずっと待っていたらしい。


さっさと出て来いっつーの!! なんて思ったけれど、琴子は話している間に空気読めずに声をかけてくるような奴じゃないやと思ったら、怒る気なんてぜんぜんなかった。



「やっぱまた演劇部絡み?」



ニヤニヤ怪しい笑みを顔に貼り付けながらながら聞いてくる琴子を若干睨みながら、



「あー…演劇部の先輩だった」



言葉を濁しめに頷いた。



「香澄モテモテだね」



そう言って面白そうに笑う琴子を横目に、あたしは心の中でボソッと呟いた。



…声がね。



顔でモテればどんなに嬉しいことか。


声がモテるとか悲しいにもほどがある。




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