遥か遠い夜明け
(一章)
 当時同級生だった夫の修一と婚約したのは、修一が18歳の誕生日を迎えた日。

 私のことを加奈、と名前で呼ばなくなったのが、結婚して三ヶ月後。

 そして、初めて私に手を上げたのがさらに三ヵ月後、今から半年前。



 今朝も「目障りだ」という冷たい一言とともに私の足を蹴った。

 その後すぐに出かけてしまったまま日付を越えても帰ってこなかったので、一応用意しておいた小さな誕生日ケーキは無駄になってしまった。



 独り占めしちゃおっかな。



 そう独り言をつぶやいて苦笑したが、手をつける気にはならなかった。

 ケーキを冷蔵庫へしまおうと立ち上がると、左足に痛みが走り、よろめいた。

 床に落ちて潰れたケーキに親近感を覚える。



 君は痛覚がないから平気だよね。
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