《短編》切り取った世界
美緒の元にだけは、定期的に兄貴からのエアメールが届く。


自分の撮った写真に切手を張ってこちらの住所を書いただけの、簡素なもの。


美緒から見せてもらうそれには、いつもいつも全く違う国の景色が映し出されていて。


本当に、何から何まで兄貴らしい。


それを見ては、“今度はスペインかな?”なんて想像するのが、

今の俺の楽しみでもあって。




兄貴の撮った写真は、兄貴の目を通して映し出されたものだから。


やっぱりどこかあたたかくて、そして懐かしさや情緒を含んでいた。


その切り取った風景を見るたびにいつも、まるで俺もそこに居るよな感覚になって。


やっぱり俺は、兄貴には敵わないな、って。


そんな風に思うんだ。



俺は兄貴みたいなすごいマジックは使えないからさ。


だから“今”という目で見たものを、必死で自分の中に切り取って。


刹那で移りゆく世界を、心の中に焼き付けてるよ。












END

(※マイクロソフトオフィススペシャリストの略。
商業学科などでは、習得を必要とする資格のひとつ。)



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