天使のメロディー

彼の席の周りは、人がたくさん集まった。

「ウィーンって、すげぇな!そんなとこ住んでるんだ!」


聞こえてきた話によると、彼の家はいわゆる音楽一家というやつで、彼もピアノをしているという。
彼の親はピアニストで、主にウィーンを活動の拠点としているため、彼は日本語は話すことができるが、日本に来るのは初めてだそう。

「んで、とーさんと、かーさんが、一回ぐらい日本を体験して来いってことで、プチ留学生ってことになったってワケ。」

一週間…か。。




その日の放課後。
残って先生の手伝いをしていたため、遅くなってしまった。

『やっばー!!はやく帰らなきゃっ!!』

と、そのとき。
どこからともなく、ピアノの音色が聞こえて来た。

その音に誘われるように、あたしは音楽室へたどり着いた。

そこには、ピアノを弾く奏野くんがいた。

『すごい…』

おもわずでた声に、奏野くんは顔を上げた。

「あ、春河じゃん!!どーしたの??」

『え!っと…先生の手伝いしてたら、遅くなっちゃって、帰ろうと思ったら、ピアノが…』

「そっか。気に入ってくれたの??」

『う、うんっ!!なんていう曲なの??』

「これは、ベートーベンの悲壮っていうんだ!」

そういって、この曲のことを話している奏野くんは、とても輝いて見えた。

「明日も弾くから、また聴きに来てよ!」

『そんな、あたしでいいの??』

「なんか…春河に聴いて欲しいんだよ…///」

『ありがとうっ!!毎日聴きに行くね!」

遠かった奏野くんに、少し、近づけた気がした。


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