アイシング、マイラブソング
近すぎるだけで緊張するのに、

目まで合ってしまうなんて。


中学の文化祭のときに劇の脇役で舞台に上がったときよりも緊張している気がする。



「な、なに?」


千架はつま先立ちしながら僕の頭上の方に手を伸ばした。



「背高いねぇ。伸びた?身長いくつあるの?」


「180…くらいかな」


本当は178.8センチ。

見栄を張って多めに言うあたり、

僕は

―小さい人間だよなぁ

と今さら実感が湧いた。


「やっぱ大きいね!あたしは156くらいで…もうちょい欲しいんだ」



僕としては、

さっき見おろしていた

まつげの感じも

うなじの位置も、

いろいろちょうど良かったのだが…



―どういう目線で見てんだよ…



そんなことはハッキリ言えないので、遠まわしに感想を述べた。



「女の子はそれくらいがいいと思うよ。藤堂はいいかんじ」



千架は少し目を丸くした。


―俺、気に障ること言ったかな?


一瞬焦ったが

「そっかぁ。ならいいか!」

と笑ってくれたので救われた。
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