不器用な君と不機嫌な私

可能性



「…ただいま」


「おかえりなさーい、香織、ご飯もうできてるから」



家に帰ると、お母さんが笑顔で出迎えてくれた。


でも今はその笑顔を

ちゃんと見ることができない。



「ごめん、お母さん。


今日ちょっと、食欲なくて、ごめんね」


「ええっ!?

ちょっと、大丈夫?」



首をかしげながら

不思議そうに私を見るお母さん。


ごめんね、今は

一人になりたい。


「なあ母ちゃん、姉ちゃんどうしたんだよー?」


「いいの、今はそっとしてあげましょ。」


「姉ちゃーん?
姉ちゃんの分も食べちゃうからなー!」


「こら、翔!
そんなこと言わないの!」



「なんだよつまんねーのー、元気出せってー!」




ごめんね、ありがとう、


大丈夫、くじけちゃダメだよね



頭の中を整理して



ちゃんと
考えるんだ


きっと私はまだ

知ることがたくさんある


だからまだ


ここで

立ち止まっちゃダメなんだ。


でも、今日だけは


楽になりたい。

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