【長編】雨とチョコレート
後部座席に横になって、ちくしょーと喚く。
目を擦って、擦って、擦って、涙なんか浮きでないようにする。
「……」
寺は何も言わない。
車中にはFMラジオが流れて、パーソナリティの明るい声に苛立ちを覚える。
手の腹の部分で目を押さえて、またつぶやく。
「ちくしょー………」
「明日もひどいことになるから、あんまり擦んな」
助手席からハンドタオルを掴んで俺に投げつける。
「泣きたいときは泣いとけよ」