彼×××彼女
「書けたやつから持ってこいよー!」
蝉の音を掻き消すよう、大声で先生が言った。
それと同時に、隣の彼がガタッと席を立った。
もう、先が決まっているのかと感心しつつ、少し慌てる。
私、最後の一人になったらどうしよう…。
「黒川。お前、これでいいのか?」
先生の声にハッとする。
¨黒川¨は、今まさにトップバッターで立ち上がった隣の男子だ。
これでいいのか?
その¨これ¨が気になった皆も一斉に黒川と先生を交互にチラ見していた。