宵の花-宗久シリーズ小咄-
亡くなった祖母が購入したという、金の細工が施してある仏壇の最下段に、母が言うそれは鎮座している。














彼岸花だ。











瑞々しく開く彼岸花は、朱色も鮮やかに、その存在感を確かなものにしていた。








「宗久さんが活けてくれたの?」




仏壇の前に座り、彼岸花が活けられた花瓶を撫でる母。






「まぁ…そんな様なものです」





実際は、助けを求められたのだが。






「私、すっかり忘れてしまいましてねぇ…会合の途中で思い出したんですよ」



ほっとしたのか、笑う母。







ほっとしたのは、彼女も同じだ。



彼女の場合は、命懸けであったろうが。








「母さん、気を付けて下さいよ。おかげで僕は、散歩の時間がなくなりました」

「散歩?」

「それと、あまり彼岸花を粗末に扱うと、来年、庭の桜が咲いてくれないかもしれませんよ」

「桜が?」








首を傾げる母に笑いを返し、僕は彼岸花を見つめた。





鮮やかな朱色は、金刺繍の細い線の様な花びらを際立たせている。








.
< 11 / 14 >

この作品をシェア

pagetop