氷狼―コオリオオカミ―を探して
急所は二カ所――眉間と喉

その喉が目の前にある。


あたしはカッターナイフを片手で握りしめ、力いっぱい突き刺した。


意外にもナイフは新雪に突き立てたようにスッと埋まり、次の瞬間、そこから強烈な冷気が噴き出した。

指が痺れる。

あたしは悲鳴を上げた。


冷気と共に、氷狼が飲み込んだ迷いが空中に撒き散らされていくのを感じた。

どれもこれも浄化され、新しい希望を含んで空に散っていく。


あの中にあたしの迷いもあるのだろうか。


冷気が涸れると、氷狼が音もなく静かにあたしの上に倒れ込んできた。


重みで息がつまった。


誰かが何か叫んでる。


体に無数の手が添えられ、引っ張られ、急に呼吸が楽になった。
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