氷狼―コオリオオカミ―を探して
大きな氷狼は横向きに倒れていた。

みんながあたしを助け出す時に横向きにしたのだろう。

白い喉にピンク色の細いカッターナイフが刺さってる。


「他の氷狼は?」

あたしはイタチにきいた。


「あなたを助け出す間に逃げたよ。どうせ小物ばかりだ」


あたしは倒れているリーダー狼を見つめた。


あんたがやりたかったのはそれ、仲間を逃がす事だよね


勝ったのはあたしか、氷狼の方なのか


ううん

最初から勝ち負けなどないんだ


そこに横たわっているのは『生命』ではなく『季節』だ。

自然の流れに勝つも負けるもない。

結局のところ、あたしが負けたくなかったのは自分自身なのかもしれない。
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