氷狼―コオリオオカミ―を探して
思い出した訳じゃないけどな……


「泣くなよ」


頬の涙を拭われて、あたしは思わず彼の手を払った。


「見ないで。そっち向いてて」


「ほらな。いつもの遥だ」


違うよ


あたしはベッドの上に起き上がって、ショウ君の背中に頬をよせてもたれかかった。


「あたしは、いつものあたしじゃない」


あなたの記憶はまがい物だから


ショウ君の背中は暖かかった。

本当に人間に戻れたんだね。


「少しだけこうしていてくれる?」

あたしは目を閉じて言った。


「ずっと側にいるよ」

彼が言った。
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