氷狼―コオリオオカミ―を探して
チェイサーが身を屈め、あたしの唇に唇を重ねた。


口から冷気を吹き込まれ、少しずつ自分が人間ではなくなっていく気がした。


唇が離れ、あたしはアイスブルーの瞳を見つめた。


「あんたが夏の間に住む所ってどんな?」


あたしがきくと、チェイサーは微かな笑みを浮かべた。


「一年中、大地が凍っている永久凍土だ。それでも短い夏の間は表面が解けて、苔が地を覆う。太陽は完全に沈まないで、明るい藍色の空のまま明けていく」


「寒くて泳げないね」


「俺達は寒さを感じない。透き通る水をたたえた三日月湖で泳ぐこともある。少し足を伸ばせば氷山の浮かぶ海で白クマと泳ぐこともできるぞ」


「楽しそう」


「お前も行くか?」


再び唇が重なった。
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