氷狼―コオリオオカミ―を探して
まあ、チェイサーは普通じゃないけど。


あたしより頭一つ大きいし


人間でさえない


人間だったらよかったのに


――そう思っている自分にギョッとした。


「チビと呼ばれたことはないのか?」


「ないよ――ううん、あったかも。でもずっと小さい頃だよ」


「そうか。では、俺も他の者のように呼ぶしかないな、トムボーイ」


「ハルカって呼んでくんない?」


「言ったであろう? それは無礼なことなのだ」


「あんたにも本当の名前がある?」


「もちろん」


「教えてくれる?」


チェイサーは口を開きかけ、また閉じた。


「知る必要はない。お前は元の世界に戻って俺を忘れてしまうのだから」


「忘れないかもしれないじゃない」


「間違いなく忘れてしまう」
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