氷狼―コオリオオカミ―を探して
「どうだね、トムボーイ。いっその事、我らとずっと冬を狩っては?」


「あんた達の仲間になれって事? 御免だわ」


「いやいや、チェイサーの恋人になれという事だ」


「それもできない」


「あれは孤独な男だ。楽しむ事を忘れてしまっている。あなたの時間を少しくれないか?」

イタチは食い下がるように言った。

「せめて一冬か二冬」


「中途半端な事ならしないほうがいいと思わない?」


一瞬、心は動いたけれど、あたしは首を横に振った。


「忘れるあたしはまだいいけど、彼はどうなるの?」


「何もないよりましという事もあるぞ」


「それを決めるのはチェイサーだよ」


「あなたが残ると言わぬ限り、あれはあなたに帰れと言うだろう。たとえ心が違う望みを叫んでいても」

イタチは哀れむように言った。

「それを心に留め置いていておくれ、トムボーイ」
< 56 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop