氷狼―コオリオオカミ―を探して
「くそっ! 今度は何を喰らったんだ?」

チェイサーが忌ま忌ましそうに毒づいた。


「あー、ビジネス書とかじゃない?」

あたしは弓の他に蹴りを入れる戦法に切り替えながら言った。

「中国の兵法を取り入れたのとか見たことある。こいつらが字を読めればの話だけど」


「字は読めぬよ」

イタチが答える。

「だが、それを読んだ人の子の思いを喰らえば知恵となる」


「能書きはいい!」

チェイサーが怒鳴った。

耳がキンキンする。


「ちょっと! 近くで大声出さないでよ!」


「すまん」


あら、意外と素直


また遠吠えが聞こえた。


あたしは目を凝らして闇を見据えた。


「チェイサー、正面のビルの入口見て。上の張り出してるところ」


氷狼が一頭、雪降る空に向かって吠えている。


大きい!

他の氷狼よりはるかにでかい


「あれが群れのリーダーだ」
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