氷狼―コオリオオカミ―を探して
「消えちゃうよ」


あたしがそう言うと、女の子は顔を上げて無表情な目であたしを見た。


「うるさいなぁ。放っておいてくれる? ここを出たいなら一人でサッサと出ればいいじゃない。この底を破れば出られるよ」


「そうなの?」


「今までにも何人かそうやって出て行ったよ」


手で破れるかなぁ


あたしは膝の下の厚い和紙のようなものを爪で引っ掻いてみた。


「ナイフ持ってないの? ほら」


女の子はカッターナイフを差し出した。


「ありがとう」


受け取ろうとしてドキッとした。

リストカットの傷があった。
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