記憶 ―流星の刻印―
心配性ね…。
そう私は溜め息をついて床から起き上がると、子虎を残して2人の元へと歩を進めた。
「大丈夫よ。何だかこの子、人慣れしてるし。食べ物だって私たちと同じ雑食じゃない?蓮の家畜は襲わないわよ。」
「――揚羽、…家畜って言わないで!馬や牛たちは僕の家族なんだっ。」
「あぁ、はいはい。」
蓮の家は古くから牧場を営んでいて、自分が世話をしている動物に対する愛情は濃い。
でも同じ動物であるこの子に対しては、草食動物を脅かす天敵という位置付けは変わらなかった。
頭が堅いわ。
「…そう言うなら、私の家族よ?この白い虎の子は。」
テーブルに着いてから子虎に目を向けると、先程までのそこに姿は無い。
自分の食事を終えた元気な子虎は、食べ足らずに私の足元でテーブルを見上げていた。
にゃあ…、と。
「…ほら。猫みたいなもんよ。可愛いじゃない?」
「――今はね。大きくなったら…って問題が、解決してないよ。だから美玲まで微笑ましい目でソイツを見るなよ…。」
蓮の厳しい言葉に、私たちは揃って口を尖らせる。
こんなに可愛いのに…、と。
「その時は、その時よ。」
「そうよ」