記憶 ―流星の刻印―
「…これでいい?…でもババ様。古傷って、別に今更…」
私の左側の肩。
肩から腕の上部に掛けて、
確かに古い傷跡がある。
傷跡って言っても、
アザの様な肌の変色で、
もう痛くも痒くもないのよ。
変色もうっすら薄い色だし、
小さな物だし、
だから気にしてないのに。
「…いいから、しときな。一石二鳥だろう…?」
「まぁ…」
別に、いいけど。
私の準備が整った事を悟ると、虎白が美玲さんの腕から私の肩に、勢い良く飛び乗った。
グッと重さは感じたけど、
「あ、痛くない…」と爪の痛みから解放された訳。
「…さぁて、準備はこれ位かね?しかし、そこの大の大人はまだ拗ねてるのかい?」
ヒャヒャとババ様は笑った。
それは確実に蓮を指していた。
「…ババ様。お言葉ですが、僕は拗ねてる訳ではなく!反対してるんです!昨日から言っている通り、揚羽は世間知らずだ。1人で村から出るなんて、自殺行為です!それをババ様が促すなんて!」
「…ほぉ。珍しくあたしに反抗的だね、蓮…。」
ババ様のギラリとした瞳に、蓮が一瞬ビクッと身を引いた。
隣に立つ美玲さんも同様に、ハラハラと蓮の腕に寄り添った。