記憶 ―流星の刻印―
「…聞いたよ?今日も客に飲み物を引っかけて喧嘩になったって?」
「…知ってるなら聞かないで。性格悪いわよ。」
フンっと顔を背けた私に、
蓮は大きな溜め息をついた。
「…何でお前はそう問題を起こすかな。せっかく蝶の様に舞う美しい踊り子だって評判なのに、同時に気が強くて扱い辛いって言われてるよ?」
またお説教ね…
「い…」と顔をしかめる私。
せっかく怒りが治まっていたのに、どうして思い出させるのかしら…。
「だって、理由も聞いたでしょ!?あの親父、茜のお尻を触ったのよ?恋も知らない可愛い生娘の茜のお尻をよ!?」
チリン!チリン…!
私が大きく怒りを表に出す度に、衣装に縫い付けられた鈴の音が辺りに響いていた。
「…生娘って…言葉を選んでよ。職業柄しょうがないだろ。我慢を覚えろよ…」
「――んまぁ!」
職業柄ですって?
しょうがないですって!?
「あのね!私たちは踊り子よ!?夜の酒場じゃあるまいし!芸術家よ!?失礼にも程があるわ!怒るわよ!?」
「…もう怒ってるだろ…?」
立ち上がった私を蓮は座ったまま見上げると、幼い子供をなだめるかの様な素振りで、再び草の上に座らせた。