記憶 ―流星の刻印―
白く曇った鏡面の裏には、青と緑色の小さな石が幾つもはめ込まれた女性らしい豪勢な作り。
でも、古い。
錆びているし、重さもある。
この旅が終わる頃には、骨董品コレクターになれるんじゃないかしら、私。
古い物ばかりが、私の手元に集まっている気がするわ?
ま、
…それは良いとして。
この手鏡、
花梨さんの妖術が掛かっているらしいのよね?
虎白と言葉が通じる為に私たちがしている3つ対の「耳飾り」同様、この手鏡も2つ対らしいの。
どこに居ようと、もう1つの手鏡を持っている花梨さんと連絡のやり取りが出来るらしいわ。
「…今日の連絡は、太磨がしてよ。そろそろ夕暮れよ?待たせたら、また怒られるわよ?」
「………俺?」
明らかに嫌そうな声。
実はあれから一晩が経っており、昨日の夕暮れ時は「別れたばかりだから大丈夫だろう」と連絡を怠った。
もうすでに怒られたのだ。
「…太磨がしてよ」
「…どうしても、…俺?」
すでに擦り付け合い。
悪い人じゃないし、良い人よ?
私たちの心配をしてくれているからこその「連絡・報告」だと分かってはいる。
でもね、どうしても。
連絡役を太磨に譲りたい理由がある。