記憶 ―流星の刻印―


花梨さんが言っていた通り、
数ヶ月前から妖術師の出国は禁止されている。

それを分かった上で、
「嘘の身分証」は一般的な登録内容にしたのだそうだ。

しかし、下調べが足りなかったというのが、砂丘の地自体が荒れているという事。
馬車に乗せてくれたお爺さんも言っていた通り、最近は関所が厳しくなった、という話。


「…もう書類書いてる途中で諦めて、最初から所長の花梨を呼ぼうかと思ったんだが…、ちょっと心の準備が…」

「……ふぅん」

「あの性格だから、余計な事まで喋るんじゃねぇか…と、本当にこうなっちまった…。」


虎白の契約者が、私だった。
それが裏目に出た。

太磨の書いた申請書に、国に登録されている本書を添付しなくてはならなかった。

本当にババ様が書類上の契約者であれば、出国禁止である契約者の代理人として、「虎白を渓谷の地へ届ける」という名目ですんなり通ったそうよ。

契約者代理の証明書類が、
やっぱり別に必要らしいけど。

しかし、それも太磨の荷物に、しっかりと用意されていた。


「……何だかゴチャゴチャしていて、よく分からないわ…」

「だから、大人の事情だって言っただろう?」

「……でも私の事よ」

< 94 / 175 >

この作品をシェア

pagetop