記憶 ―流星の刻印―
花梨さんが言っていた通り、
数ヶ月前から妖術師の出国は禁止されている。
それを分かった上で、
「嘘の身分証」は一般的な登録内容にしたのだそうだ。
しかし、下調べが足りなかったというのが、砂丘の地自体が荒れているという事。
馬車に乗せてくれたお爺さんも言っていた通り、最近は関所が厳しくなった、という話。
「…もう書類書いてる途中で諦めて、最初から所長の花梨を呼ぼうかと思ったんだが…、ちょっと心の準備が…」
「……ふぅん」
「あの性格だから、余計な事まで喋るんじゃねぇか…と、本当にこうなっちまった…。」
虎白の契約者が、私だった。
それが裏目に出た。
太磨の書いた申請書に、国に登録されている本書を添付しなくてはならなかった。
本当にババ様が書類上の契約者であれば、出国禁止である契約者の代理人として、「虎白を渓谷の地へ届ける」という名目ですんなり通ったそうよ。
契約者代理の証明書類が、
やっぱり別に必要らしいけど。
しかし、それも太磨の荷物に、しっかりと用意されていた。
「……何だかゴチャゴチャしていて、よく分からないわ…」
「だから、大人の事情だって言っただろう?」
「……でも私の事よ」