記憶 ―流星の刻印―


「……居ないじゃない?どうせ鳥か何かでしょ。」

鼻で笑う私に、虎白はしっかりと視線は空へと向けたまま、声を荒げていた。


『――居たもん!!赤いの!!絶対にお爺さんが言ってたやつだよ~っ!!赤い火だよーっ!!』

「……まさか」

私は再び視線を上げた。

何だっけ?
伝説の朱い鳥、だったかしら。

それどころじゃなくて、
すっかり忘れてしまったわ。


『――ほらっ!!ほらほらっ!!』

虎白が腕の中で暴れた。
その衝撃を受けながら、朱い空の中の「赤い火みたいの」を目を凝らして探す。


『――たいまーっ!!太磨ぁ!!オジサ~ン!!!』

にゃあにゃあ、と虎白が太磨を呼んだ。


「――あぁ、もう見てる…」

私のすぐ横で、
落ち着きながらも興奮を隠せていない、うわずった低い声がした。

発見出来てないのは、私だけ。


「……朱い空に、朱い鳥?分かり難いわねーっ!!何なのよっ…」

ブツブツと唱えながら目を泳がせていると、太磨の手が私の頭に伸びた。

――グイッ…

無理矢理に方向転換された視線の先に、それは居た。


「――…あ」

ドキンと、
心臓が跳ねた。

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