恋の方程式

空sid

小春を初めて見たのは入学式だった。



周りに群がる女子の相手をしているとき、ふと、俺に目もくれない子が通り過ぎるのが見えた。




はっと息をのむくらいきれいなのに、その瞳にはなんの色も見られなかった。




その日から、俺は無意識に小春のことを目で追いかけるようになった。




休み時間も外をみてばかりで、たまに周りを見渡したと思ったらため息ばかり。



親しい友達がいるわけでもないのか、いつも一人だ。



笑った顔も、怒った顔も、見たことがなかった。




そんなある日、保健室にいく小春を見て、すかさず追いかけると、すやすやと眠る小春の姿があった。




「なぁ、お前は一体なにを抱えてんだ?」



眠る小春につぶやいても、返事がないのはわかってる。




それでも俺は、小春と話がしたくて隣で起きるのを待つことにした。



「・・・ふっ・・・ぐすっ」



え?泣いてる?


小春は目を閉じたまま泣いていた。




泣いているところ、初めて見た。



「・・・うっ・・・徠っ・・」



徠?男の名前?



俺は徠って誰だって考えるのに夢中で、小春が目を覚ましたことに気が付かなかった。







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