村雨紘一の場合【腐女子も恋していいですか?】番外編
俺にとって女とは
 あれは、中学三年の秋だった―――。



「紘一、今回の模試の結果はどうだったんだ?」


 親父は俺に視線も向けずに、朝食を食べながら聞いてくる。
(たまに口を開けばこれだ。他に言うことねーのかよ!)


「言っておくけど、お母さん、東雅高校しか認めませんからね」
(だから何だよ!)


 心の中で悪態をつきながら、あえて言葉にしない。
 言ったところで、仕方がないことがわかっているからだ。


 俺が返事をしなくても、それに対して何も言わない。
 この人たちは、俺が何をしようが一切関わってこない。


 ただ、今の成績をキープしておけばいいだけの話し。


 この人たちの俺への関心は、俺が病院を継ぐことだけ。その足掛かりとして、まず、東雅高校に入学させる。―――それだけだ。


 成績さえ下げなければ、俺が何をしようと両親は干渉しない。
 この状態は、物心ついた時からそうだった。


 家には、常に誰もいない。それが世間の常識だと思っていた。
 それが普通だと思っていた。
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