村雨紘一の場合【腐女子も恋していいですか?】番外編
必要とされない自覚
「とは言ってもなー」
「何だよ、まだ言ってんのかよ。さっさと家帰れ」
 塾帰り、駅に向かって歩きながらぼやく俺に、修太は一蹴する。



「ああ。わかってるけどよ」
 修太の言いたいことはわかっている。俺と親のわだかまりを消したいと思っているのだろう。



 俺の荒れている生活は、親と上手くいってないからだ。そう思っているに違いない。
 実際、俺もそうだと自覚はしている。でも、今さら―――。



 そう、今さらなんだ。
 俺はあの家に、出来る限り居たくない。



 実の子供より患者を優先する親。家族団らんなど無く、いつでも冷めた空気。



 医者という仕事柄、患者を優先するのは仕方のないことだと、小さい子供じゃないのだから、もう理解はしている。



 でも、小さいうちから、親に対して全てを諦めてしまった俺には、今さらどうする気にもなれない。




 そして、夫婦でいる必要性を全く感じらないあの両親。
 両親が会話をした記憶など、ない。

 早く別れりゃいいのに別れない。
 親が離婚したって、しなくたって、まあ、どうでもいいけどな。 

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