部活探偵のツンデレ事件簿-タイム・トリッパー殺人事件-
「理事長と沢村先生は、少なくとも何かの関係が有った。これは事実だと思う。で、なんかの理由で、その関係に不具合が生じた。そして、理事長は沢村先生に恨みを持つ。そして、人生めちゃめちゃにしてやろうと考えて、自分で密室を作って、自分で自分を殺す。沢村先生の痕跡を残してね」

その説を聞いた亜矢子の表情が、酷く複雑な者に成る。

「自分を殺してまで相手を陥れたいと思う様な恨みって、何?」

「女の亜矢子には分らんかもしれないが、男は意外と嫉妬深い。若ければ力づくで奪い返す事も出来るだろうが、理事長の歳だ。力で女を奪い返すなんて芸当は無理だろう。ならば、いっそ自分を犠牲にして相手の人生をめちゃめちゃにしてやるって……」

「却下……やっぱり無理が有る。自分が死んじゃったら、作戦が成功したかどうか、確かめようがないじゃない。意味無いわ」

「戦中派だぞ、そのくらい考えるかも知れないじゃないか」

「却下!」

「じゃぁ、どうするんだよ」

その問いに亜矢子の瞳が不気味に輝く。琢磨は、それを見て又始まったとこめかみを押さえてその場で、かちんこちんに固まった。

「さ、行きましょ。もう一度現場を見るの。現場が全てを物語るわ」

亜矢子はしごく当たり前の様な表情で伝票を琢磨に渡すと、沙希に席を立ち、すたすたとファミレスから出て行った。残された琢磨は、がっくりと首をうなだれて、肩を小さくすくめて見せた。
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