部活探偵のツンデレ事件簿-タイム・トリッパー殺人事件-
「いいや、こんな商売をしてると、君達みたいに若い人達と話す機会が極端に少なくてね……」

ボヤキにも聞こえる台詞を吐いた後、前原は一瞬地面に視線を落としてから上目遣いに亜矢子と琢磨を見詰め、再び視線を二人に戻す。笑顔では有るが、その視線には、家辞と言う職業柄の深い鋭さが有って、亜矢子が少し後ずさる位の迫力が有った。

「――じゃぁ、昼食でも如何ですか。何処か落ち着けるところで」

意外な事に、琢磨は一歩も引かなかった。前原の視線には明らかに下心が有った。しかし、琢磨の視線にも同じものを感じる事が出来る。どうやら、二人の利害関係は一致する物が有るのだろう。そして、どちらからとも無く、二人は玄関の外に向かって歩き出した。

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」

置いてけぼりを食らいそうになった亜矢子が慌てて靴を履き替えて二人の後を追いかける。そして琢磨の横に走り寄るとちらりと前原と視線を合わせ、これ見よがしに琢磨の腕に抱きついた。もう少し小さい子なら「い~だ」でもしそうな表情を見て前原が、やれやれと言う表情で小さな溜息交じりに表情を崩して見せた。そして、折りたたみの傘を広げると、これ見よがしに、琢磨と相合傘をして見せた。その仕草が妙に少女っぽく思えて前原は思わず苦笑いをして見せた。
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