部活探偵のツンデレ事件簿-タイム・トリッパー殺人事件-

★★★★★★

「……先生…沢村…先生…」

直子の瞳に急激に輝きが戻る。定まらなかった焦点が瞬時に戻り声の方向に向かって視線を移した。

「どうしたんですか、先生?」

美術部の部長、穐本由梨絵(あきもとゆりえ)は、ちょっと様子がおかしい直子の挙動に気がついて、イーゼルに立てかけられた大型のキャンバスに木炭でデッサンする手を止めて心配そうに、そう呼び掛けた。

「――え、あ、ああ、なあに?」

その場を繕おうと無理矢理微笑む直子の表情は不自然でぎこちなく、明らかに心此処に有らずな事を明確に読み取る事が出来た。

他の美術部員達も、キャンバスの横から教壇端に置かれた椅子に座る直子の事を不可思議な表情で見詰めていた。

陽の光が傾いて、西日が差し込む教壇は、床に光を反射させて直子の輪郭をぼんやりと浮かび上がらせる。
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